森に現れた悪魔の大釜 リドフォード・ゴージュ Lydford Gorge

リドフォード・ゴージュのことを知ったのは、デボン州にあるエクセター大学出身の友人との何気ない会話でした。

ウォーキングの話をしてたときのことで、彼がとても気に入っていたウォーキングコースのひとつだそうで、「いつか、リドフォード・ゴージュへ行ってみて!きっと気に入ると思うから」と言われたのです。

『人に勧められたものは、とりあえず試してみる』が信条の私は、車でコーンウォールへ行く途中で立ち寄ってみることにしたのです。

私は渓谷や森林が大好きなのですが、鬱蒼とした木々からの木漏れ日や滝や小川などの水辺が好きな方には、せひ一度は足を運んでみてください。マイナスイオンたっぷりの新鮮な空気と、清涼な水の流れが疲れた心を癒してくれますよ!

 

2つの駐車場、Devil’s Cauldron entrance がお勧め

デボン州を流れるリド川(River Lyd)を取り囲むようにして遊歩道があるのですが、こちらの写真(地図)の両端に駐車場があります。

左端にデビルズ・コルドロン(Devil’s Cauldron)駐車場、右端にウォーターフォール(Waterfall)駐車場がありますが、私のおすすめはデビルズ・コルドロン駐車場からスタートするルートです。

その理由は、この遊歩道は幅が狭いため一報通行となっているのですが、デビルズ・コルドロンから歩き始めたほうが、最後にクライマックスともいえるデビルズ・コルドロン(悪魔の大釜)を見ることができますので、最後に「ああ、すごかったねぇ!」と思うこと請け合いだからです。

スタッフの話ですと、大人の足でゆっくり歩いて約1時間45分で1周できるそうですが、私たちは山歩きに慣れていることもあり、1時間15分くらいで回れました。

途中には急坂があったり、滑りやすい岩場がありますので、しっかりしたウォーキングブーツを履いていくことをお勧めします。

 

30億年前の地殻変動によって生まれた地

『ゴージュ(Gorge)』という言葉を始めて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんが、『ゴージュ』とは『谷』のことです。主に狭い谷、つまり『渓谷』を指すことが多いのですが、『渓谷』という言葉からイメージする小さな谷よりも、少しだけスケールの大きな谷のことを指して言うことが多いような気がします。

リドフォード・ゴージュはダートムーア国立公園(Dartmoor National Park)の東端に位置しています。リド川(River Lyd)沿いに約2.4kmに広がっており、イギリスで最も高低差のある渓谷です。

37億年前には海底だった地層が岩石化し、約30億年前に地殻変動によって地表にせり上がって生まれたのが、このリドフォードと呼ばれる地です。この地層は悠久の時を経て、奇妙な形にねじ曲がったり、さまざまな地層が折り重なったりしているため、とても興味深い景観を作っています。その多くが緑の木々や苔に覆われているものの、地殻変動の威力を目の当たりにした気分になります。

地殻変動がさらに進み、氷河期時代の約11,500年前にリド川が生まれ、現在私たちが目にしている『ゴージュ』を形成するようになったそうです。

 

苔むした木々、年月を経た木々、森林浴をしながらウォーキング

遊歩道は狭く、人が一人通るだけの幅しかない場所が多いのですが、デビルズ・コルドロン入口からウォーターフォール入口までの区間は比較的歩きやすい道が続いています。

川沿いの道を歩くと苔むした木々が多く、自然の作る景観の美しさに目を奪われます。

 

 

30mの高さから落ちる滝 その優雅な姿から女性に譬えられています

ウォーターフォール入口を通り過ぎると、急坂を降りた先にホワイト・レディ滝(White Lady Waterfall)が見えてきます。

今年は雨が多かったので水量が例年よりも多いようですが、ウェディングドレスのベールのように長く伸びた白い水の流れは、まさに『ホワイト・レディ』という名前にふさわしい優美な滝でした。

 

子供が通るときは注意が必要! 狭くて滑りやすいのでご注意を

ホワイト・レディ滝を過ぎたところでリド川を渡り、対岸を歩くことになります。この道は狭い急流に沿って作られた遊歩道で、川側に手すりがなかったり、常に川の水で濡れている岩に足を滑らせたり、ときに大きな岩があったりと、ちょっとした冒険気分が味わえます。

場所によっては、子供が一人で通るのは危険ではないかと思える場所もありますので、お子さん連れの方はご注意ください。

私の彼はハイキングに慣れているのですが、この川沿いの岩場ではぐっと歩くスピードが落ちました。

どうしたんだろう?と思って様子を見ていると、足のサイズが28cmもある彼は、自分の足を安定して載せられる大きさの岩が見つからず、足場を探すのに苦労していました。チビな私は足のサイズも22.5cmなので、ぴょんぴょんと軽い足取りで歩けました。

 

いよいよクライマックス! 悪魔の大釜

リドフォード・ゴージュの見所である、デビルズ・コルドロン(悪魔の大釜)を見るためには、こんなに細い岩場を通らなくてはなりません。

うっかり足を滑らせたら谷底に真っ逆さまです。思わず手すりを握る手に力が入りました。

上の写真の、少年の頭の左側に見えるのが鋼鉄製の足場になっていて、この足場に辿り着くと、いよいよ悪魔の大釜を目の当たりにすることができます。

直径10m弱くらいの滝つぼに、ものすごい勢いで水が流れ込んでいます。ごうごうと水音が轟き、尽きることのない大量の水が渦巻いています。

白波を立てながら渦巻く水、耳を覆うほどの轟音、まさに『悪魔の大釜』という名前のとおりです。

 

ナショナルトラストに寄贈

1943年に、ラドフォード家(Radford Family)がリドフォード・ゴージュ一帯をナショナルトラストに寄贈したそうですが、狭い渓谷へのアクセスは難しく、一般公開のための本格的な整備や設備を施したのは1969年以降だったそうです。

しかし、常に水しぶきで濡れた岩は滑りやすく、流れの早い大量の水は危険を増し、その設置工事は困難を極めたそうです。

ナショナルトラストのサイトに、大水のときのデビルズ・コルドロンの写真が載っているのですが、鋼鉄製の足場が完全に水に埋もれていました。自然相手のことですから仕方がないとはいえ、せっかく作った足場が流されてしまうことあったそうで、設置には相当の苦労があったようです。私も鋼鉄製のテラスから悪魔の大釜を眺めながら、「この足場、どうやって作ったのかしら?」と疑問に思ったくらいです。

たった2時間弱のウォーキングですが、自然の景観が生み出す妙、マイナスイオンが満ちている清廉な空気、そしてちょっとした冒険気分も味わえますので、近くに行く機会があったら是非立ち寄ってみてください。

 

Lydford Gorge(National Trust)

URL https://www.nationaltrust.org.uk/lydford-gorge

 

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