【イギリスの歴史】イギリスのバラ

今の時期は、バラが見事に咲き誇っていますね。

バラと言えば『イングリッシュ・ローズ』を思い浮かべる人も多いと思いますが、実は『イングリッシュ・ローズ』とはイギリスのバラ農家デビッド・オースチンが作出したバラにだけつけられた名称なのです。

そのため、他のバラ農家が作ったバラはイギリス産であったとしても『イングリッシュ・ローズ』と呼ぶことはできません。それをふまえて、こちらでは『イギリスのバラ』という意味で『ブリティッシュ・ローズ』という言葉を使うことにしました。

 

バラの祖先 オールド・ローズ

日本のバラ園では『四季咲き』と呼ばれる、5月から10月くらいまで繰り返し咲くバラが広く育てられているようですが、バラの原種であるオールド・ローズは『一季咲き』(一度だけ咲く)のもので、古代エジプトやローマ帝国時代にも広く栽培されていたという数千年の歴史を誇るバラです。

オールド・ローズは、たいていピンク・白・紫がかったピンク色をしており、香りの強いものが多く、夏の初めに一斉に咲き始めて数週間で開花が終わってしまいます。

Gallicas(ガリカ)は、『バラの祖』とも呼ばれ、最も古い原種だと言われています。

 

【ガリカ】

 

ローズウォーターの原料になるダマスクローズも、オールド・ローズの一種です。

 

【ダマスク・ローズ】

 

ブルボン・ローズの台頭

イギリスでは1800年代にバラの栽培が脚光を浴びはじめましたが、特に人気があったのは『ブルボン・ローズ(Bourbon Rose)』という種類のバラです。

ブルボン・ローズはオールド・ローズと異なり、5月から10月くらいまで繰り返し咲く『四季咲き』のバラです。オールド・ローズにように育てやすいため、イギリス国内では広く栽培されていました。

そして、ブルボン・ローズの『繰り返し咲く』性質をもとに、1840年頃からヨーロッパ各地で品種改良が進み、さまざまバラが産出されるようになりました。

ブルボンローズ 【ヴァリエガタディボローニャ】

 

色彩のターニングポイントは中国から! ティー・ローズ

今でこそイギリスはバラの栽培で有名ですが、初めてティー・ローズをイギリスにもたらしたのは中国でした。1840年代に、ティー・ローズである『Mutabilis(ムタビリス)』などが、中国からもたらされたのです。ムタビリスは、かつて活躍していた紅茶輸入船の名前にちなんで名づけられたものです。

 

【ムタビリス】

 

そして、1840年代にもたらされたバラには、それまでのオールド・ローズにはなかった色である『黄色』いバラがあったのです。

このころを皮切りにして、イギリスでは1840年から1950年にかけてバラの一大ブームが巻き起こりました。

 

ハイブリッド・ティー・ローズ(HT)の誕生

こうしてイギリスにわたってきたティー・ローズは色彩が豊かで、しかも四季咲きのバラでした。そういった『ティー・ローズ』をもとにして、『ハイブリッド・ティー・ローズ』が生み出されました。

特に第二次世界大戦後に産出された黄色いHTローズである『ピース』は一世を風靡し、イギリスだけでなく世界各国で栽培されました。

 

【ピース】

 

HTは、バラのなかでもっとも育てやすい種類と言えます。

基本的に1本の枝先に1輪のバラしか咲きませんが、花が終わった後に剪定すれば、11月くらいまで何度も枝を伸ばして花をつけてくれます。

HTは直立タイプのものだけだと思われがちですが、ツルバラのように壁に這わせることのできるタイプのも数多くあります。一輪のバラが大きめのものが多いため、上手に這わせると夏の間ずっと見事な花と香りを楽しませてくれますよ。

【マダム・キャロライン・テストュート】HT ツルバラ

 

 

フロリバンダ(房咲き)バラ

『フロリバンダ(Floribunda)』とは、アメリカで名付けられたバラの系統のひとつです。よく『花束を意味する言葉』などと説明されていますが、Froribunda とはラテン語で『Multi-flowered(複数の花)』を意味する言葉です。文字通り、1本の枝の先に何輪ものバラが房のように咲く種類のバラです。

1924年にデンマークで生み出された『エリゼ・ポールセン』が世界で最初のフロリバンダ種と言われており、HTローズとポリアンサローズの交配により花付きの良さを実現させました。

 

【イージーゴーイング】

 

一枝の先に複数のバラが咲くことから、種類によっては花の重さで俯き加減に咲くバラもありますので、そういうバラはアーチなどに仕立てると美しい景観をもたらしてくれます。

 

 

イングリッシュ・ローズの代名詞! デビッド・オースチン

バラ好きの方で『デビッド・オースチン』の名を知らない人はいないと思います。

元々農家の息子でしたが、近所の人が育てているハイブリッド・ティー・ローズに魅せられ、バラの改良に人生を捧げた男性です。1960年代から新種のバラを産出しており、現在も年に2~3種類の新種を世に出しているバラ農家です。

彼の夢は、オールド・ローズの見た目と印象を備えつつ数多くの花弁をもち、オールド・ローズと違って何度も繰り返し咲くバラを生み出すことでした。さまざまなバラを生み出すことによりイングリッシュ・ガーデンに彩を添え、ガーデニングの可能性を広げることに貢献し、そして可能な限り香りの良いバラを生み出すべく努力を続けていました。

その努力の甲斐があり、現代ではイングリッシュ・ローズの代名詞ともいえる人物にまでなりました。

たとえば、デビッド・オースチンの『トーマス・エイ・ベケット』は、彼の夢を体現しているバラです。オールド・ローズのようなシェイプでありながら多くの花弁をもち、オールド・ローズのような香りを放つバラです。もちろん、繰り返し咲く四季咲き品種で、花数もオールド・ローズに負けません。

【トーマス・エイ・ベケット】

 

デビッド・オースチンのバラはカップ型のバラが多いのですが、『トーマス・エイ・ベケット』の外向きに開いた花弁はオールド・ローズを彷彿とさせます。クリムゾン・レッドの美しいバラは、青空のもとで見事なコントラストを醸し出します。

 

カップ型のバラ【クイーン・オブ・スウェーデン】